訓練内容

「しんがくどう」ではセラピストを中心に、各スタッフが利用児それぞれに合わせた訓練を行っております。

このページに記載されている訓練内容は、各々の評価を基にした、利用児の特性やレベルに合わせた訓練内容の一例であり、他児がここで紹介されているような特性があっても訓練内容が同じとは限りません。

※注 科学的な評価が取れず、紹介している内容の科学的根拠が理解できない方が真似をすると、お子様の誤学習や事故に繋がる虞がありますので、安易に取り扱わないようご注意下さい。

理学療法士(重症心身障害児向け)

基礎情報

  • 診断名:ウエスト症候群(による両上下肢体幹機能障害)
  • 年齢、性別:10歳、女児
  • 療育手帳:A1
  • 身体障害者手帳:1級
  • GMFCS:Ⅴ

評価

  • 介助レベル:全介助レベル
  • 移動レベル:全介助レベル(座位保持装置付き車いす)
  • 日常的には、臥位か車いす上で過ごすことが多い。
  • 自発的にものに興味を示し、身体を動かすことは少ない。
  • てんかん発作を起こすため、覚醒レベルが低いことが多い。
  • 弛緩性麻痺
  • 足関節:内反尖足(左>右)
  • 脊柱:Cカーブの側彎(左凸)
  • 臥位:膝関節屈曲位で股関節外転・外旋位、足部内反。
    手足をよく動かしており、寝返りを打つこと可能。
  • 座位:上肢での支持を行えば、数十秒程度の座位保持可能。

目標

①関節可動域の向上、変形・拘縮の予防
②座位保持能力の向上(視界の確保、上肢操作の促通)

座位保持訓練

Head up・上肢操作の促通

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理学療法士

子供がひとりだけでは達成できないが友達や親や大人などが少し援助することで問題が解決できる領域を『最近接領域』といいます。療育を決定するには、今何ができないよりも、どのような知性や能力が潜んでいるのかということを見いだす課題や環境を設定する事が必要であります。
できるようになるには、自分自身で行為を選択し、行為の制御・調整ができることであり自己の身体を通して何らかの気づき、驚きが生じる経験をすることです。
認知神経リハビリは、子供がどのように動くかを①どのように認識するか②どのように注意を使うか③どのようにイメージするか④どのように言語や前言語を使うか⑤どのように学習するかを評価・療育を行う上で上記の事を大切に行っています。

療育内容の説明
【空間と視覚の認識】
(1)向いている方向の異なる三角形と半円形
課題1(視覚):絵と同じ物を選ぶ
課題2(聴覚):『△の先端の上方向に向いているのはどれ』の質問に子どもが指さす
課題3(言語):療育者が渡した図柄を子どもが答える
例:三角のてっぺんが上を向いている

(2)情感を用いた表情の特性を見て完成
課題1(視覚):①表情が同じになるものを選ぶ。②療育者の顔を見て同じ表情を選ぶ。
課題2(聴覚):①笑っている顔はどれかを選ぶ。②笑った顔をしてください(子どもが行う)。
課題3(言語):①表情カードを指さしこの表情は何?②療育者の表情を見て答える。

(3)カードとの照合
課題1(視覚):同じカードを選ぶ
課題2(聴覚):①『リンゴはどれ』の質問に子どもが指さす。
②果物や乗り物のカードを並べて『果物はどれ』の質問に子どもが指さす。
課題3(言語):①療育者が指さしたカードは何?1枚選択し何を渡したかを答える
②『リンゴは黄色いですか?』の質問に『違います』『赤いです』と答える。

(4)ステック課題
課題1(視覚):①同じように並べる(ペアを作る)②低いから高い順番に並べる
課題2(解読):ステックを2本選び『どちらが長い?』『短い?』と質問し子どもが指さす
課題3(言語):ステックを親指と人差し指で挟み子どもが『右が長い』『左が短い』と答える

(5)型はめブロック
課題1(視覚):同じ型に入れていく
課題2(解読):療育者が『○を入れてください』と伝え子どもが選び入れる
課題3(言語):『この型は何ですか』の質問に答える
(形を袋の中に入れて行う課題)
課題1(体性感覚-言語):この型を感じて答える
課題2(体性感覚-視覚):この型を感じてカードのどれだか指さす
課題3(言語-体性感覚):△を探してみましょうと伝え袋の中から探す

※子どもがこうした関係性を築けるのは注意過程を動的に活用しないといけない。自らの注意に方向性を与え、療育者(他者)と共有する能力は志向性を表す基礎を創ることです。

【身体部位・位置の認識・手や足への注意の分配(予測・運動イメージ)】
足型カード
課題1(視覚-視覚):①同じカードを選ぶ
②療育者の足がどのようになっているかを見て考える
③療育者のポーズと同じカードを選ぶ
※2枚から選択、数枚から選択と難易度を調整する
課題2(体性感覚-視覚):療育者が子供の足を動かし子どもが同じポーズのカードを選ぶ
2枚から選択、数枚から選択と難易度を調整する
課題3(視覚-体性感覚):カードを見て子供自身が同じポーズをとる
課題4(視覚-言語):①カードをみて説明をする。
②療育者の足がどのようになればその絵と同じですか?
例①足が開いている②右足が前で一歩でている

上肢と下肢の位置の認識
課題1(視覚-視覚):①上肢と下肢を様々な位置に置いているカードと同じカードを選ぶ
②療育者の上肢と下肢がどのようになっているかを見て考える
③療育者のポーズと同じカードを選ぶ
課題2(視覚-言語):①療育者が一つのポーを選ばせる。
②療育者が同じポーズになるように子どもが説明する
※難易度を変えるには説明する時に閉眼で行う
課題3(体性感覚-視覚):①子どもの上肢と下肢を動かし子どもが同じポーズのカードを選ぶ
※難易度を変えるには閉眼で行う

※認識の後に正しくても間違っていても療育者はもう一度閉眼で『こちらがあなたが先ほど選んだポーズで、これが同じだと選んだポーズです。本当に同じですか?』と聞く。どこから同じ、間違いとわかったかを聞く

【足の受容表面を細分化・位置の認識】
課題1(接触):①足の裏で触れた・離れたかを感じる
②足の裏のどこにドットがあるかを感じ認識する
※2枚・数枚のカードから同じカードを選ぶ

【言語】
課題1(視覚-視覚):口の形のカードの照合
(聴覚-視覚):療育者の声を聞いてカードを選ぶ
(視覚-言語):療育者の口の形・カードを見て子どもが声を出す

【スポンジ課題】
課題1(触覚):①スポンジに足の裏が触れた・離れたかを感じる
②スポンジの硬さ(硬い・柔らかいか)を左右や前後で感じ認識する。
※スポンジに身体がどのように変化をしたかを感じてもらい言語化する
※表情や筋肉の収縮で反応をみる
※足・手・身体(背中)にスポンジを当てていく

【表面素材課題】
課題1(触覚):①療育者が5枚の異なる表面素材を持つシートから1枚選ぶ
②子どもの手を布の中に入れて見えないようにする
③シートを感じてもらう
④感じた物と同じシートを探す
課題2(触覚―言語)①シートを言語化する
例:つるつる。ざらざら。でこぼこ。ふわふわ…。
※難易度を変えるには、1枚のシート、2枚のシート。
どの指で触れたかを聞いていく

療育をすすめる中で親からのコメント
①興味のあるものを再度作ろうとする。自ら手を伸ばして行う仕草がみられる。
②挨拶(おはよ!)やカウント(1・2・3・・10)を一緒にいえる
③言葉を少し覚えてきて会話が楽しめるようになった
④母が他者と話をしているのを見つめ突然泣き出したり疳積を起こして自傷行為
(床に額をガンガンぶつける・手背面を噛む・口唇を噛む)が見られていたが少なくなった。
⑤シュークリームを最後まで一人で潰さず食べれるようになった
⑥お友達と手をつないで歩いてきてくれた

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作業療法士

症例紹介

  • 氏名 診断名 :ケースA 自閉症スペクトラム
  • 学校:地域小学校 特別支援学級在籍
  • 保護者のニーズ:・ 身体能力が低く、体を使って遊ぶことが苦手
    ・ 指示に対してスムーズに行動に移せるようになって欲しい
    ・ 社会性がついて欲しい

評価

  • 知能検査
    WIPPS:PIQ103 VIQ53 IQ72
    空間的処理得意,聴覚的処理苦手
  • JSI‐mini
    感覚探求:Redゾーン 感覚過敏:Greenゾーン 合計:Redゾーン(感覚探究行動が目立つ)
  • 簡易的姿勢運動アセスメント
    片足立ち:
    ・背臥位でのボール姿勢(10秒):頭部と腹部を近づけること困難
    ・腹臥位での伸展姿勢 (10秒):床から足や腹部をはなすこと困難
  • 感覚識別アセスメント
    a触覚‐固有感覚識別機能
    指 :視覚情報を遮断した中で
    素材:「ざらざら╱ツルツル╱すべすべ╱凸凹」 全回答正解
    形 :「○・△・□の形の弁別」  全回答正解
    重さ:「大・中・小の重さの弁別」 全回答正解
    b視覚識別機能
    図地と素地:複数の重なる図形の中から提示された図形の選択可能
    空間構成 :複数の中から異なる(向き,方向)図形の選択可能


  • 心の理論検査
    ①ボールの問題(サリーとアン課題):誤答
    他者の視点に立って考えることができず、自分が見たまま答える。
    ②はさみの問題(スマーティ―課題):誤答
    自分がいま知っている情報を伝えてしまう。

OT訓練
(1)単語逆唱課題

道具:絵付き単語カード
内容:検査者が口頭で伝える単語を逆順で復唱させる
訓練開始:2枚のカード(時計、ネコ)を掲示
検査者:指差しをしながら「時計 ネコ」
子ども:指差しをしながら「ネコ 時計」
連続して正答していくことで1単語ずつカードを増やしていく
段階付け:2つの単語カードよりスタート。正答したら単語数を1つ増やす

(2)感覚識別課題
①触覚識別課題

道具:素材カード(ざらざら・つるつる・すべすべ・ふわふわ・凸凹)
内容:視覚を遮断する。触れた素材を答えてもらう
訓練の開始:準備・説明後
検査者:「今から素材を触れてもらいます。どの様な素材か教えて下さい」
子ども:「ザラザラしている」などと答える
段階付け:触れる素材を2つにして、触れた順番を覚えるなどを取り入れる。

②触覚と固有覚の識別情報と視覚情報の統合課題

道具:「〇・△・□・」など形の積木,厚さが異なるスポンジ,硬さが異なる物
内容:視覚を遮断する。「形,固さ,厚さ」に触れてどのような素材か答えてもらう
訓練の開始:検査者:「今から色々な形をした素材に触れてもらいます。
どのような形をしているか教えて下さい。」
子ども:「(触れた形に)角がとんがっている」と答える。

(3)赤青課題

道具:「赤」「青」のカード
内容:検査者が「赤」と指示すると子どもは「青」を指差す
訓練開始:検査者:「赤」
子ども:「青」のカードを指差す
段階付け:検査者の口頭指示の速度を速める

(4)ジャンケン課題

内容:検査者がグーを出す場合は子どもは「チョキ」
チョキを出す場合は、子どもは「パー」をだす
訓練開始:検査者:ジャンケン 「グー」
子ども:「パー」を出す
段階付け:検査者の口頭指示の速度を速める。
口頭指示と動作をかえる(例:チョキの場合は「グー」など)

(5)運動を用いた聴覚・視覚情報の注意の分散と集中運動機能の課題

道具:道具①~④
内容:ルール①と②を示す。
「赤は止まれ」「黄色は走る」「青は歩く」
「木は立つ」「犬は走る」「牛は歩く」「うさぎはジャンプ」を覚えてもらう
検査者の指示にあわせてポーズをとる
訓練開始
:検査者が③もしくは④から1枚選び順次提示する。
「絵」と言えば絵の動作、「色」と言えば色のポーズをとる
段階付け:慣れてくれれば絵を提示するスピードを上げていく

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言語聴覚士

感覚特性を考慮した
前言語期の児への言語発達支援

基礎情報

【Aくん】

  • 診断名:広汎性発達障害
  • 療育手帳:A2
  • 年齢、性別:7歳、男
  • 家庭環境:父、母、本児の3人家族
  • 教育環境:支援学校在籍

来所当時(平成28年4月時点)の様子

  • 警戒心が強く、初めての事柄が苦手。
  • 集団の中に入ることが出来ず、人が少ない環境を好む。
  • ざわざわした環境は泣いて嫌がる。
  • 掃除機とCDプレーヤーで繰り返し遊ぶ。
    ※遊び方 掃除機:眺める、引っ張って歩く・CDプレーヤー:ボタンを押す、CDの出し入れをする

評価

【言語コミュニケーション面】(平成28年4月時点)

理解面 ・単語理解は日常高頻度語に限る
・指さし(-)
・大小(-)、色名(-)、二語文(-)
表現面 ・発語(-)、発声はわずか
・身振り(-)、指さし(-)
・要求表現:手引きによる表現はあるが不確実
・拒否は態度で示す(泣く、逃げる)
コミュニケーション面 ・アイコンタクト(↓)
・二者関係の確立(-)

【感覚運動面】 JSI-mini(平成28年4月実施)

目標

【長期目標】(平成28年4月~平成29年4月)

  • 二者関係を築く(言語理解、表出の拡大へつなげる)

【短期目標】※3段階に分けて目標を設定

  • 第1段階:安心して過ごせるようになる。スタッフと信頼関係を築く。
  • 第2段階:自己から周囲へ意識を向ける。
  • 第3段階:人へ注意を向ける。

支援方法と結果

【第1段階】(平成28年4月~平成28年7月)

  • 支援方法
    目的:安心して過ごせるようになる。スタッフとの信頼関係を築く。
    方法:環境設定
    ・スタッフと1対1で、毎日同じ場所(密閉されていない空間)にて過ごす。
    ・関わる際は、感覚の過敏性に考慮し、ある程度距離を保つ。
    ・児と関わるスタッフを限定し、繰り返し同じスタッフが関わることで安心感を与える。
    ・警戒心が強いため、慣れるまではこちらからの働きかけは少なく、
    児のペースにこちらが合わせていく。
  • 結果
    ・少しずつ行動範囲が拡がり、自分のペースで好きなことを楽しむようになった。
    ・スタッフに対しての要求表現(手引き)が増えた。

【第二段階】(平成28年7月~平成28年10月)

  • 支援方法
    目的:自己から周囲へ注意を向ける。
    方法:・安心できる環境の下で行う。
    ・児が好きな活動の中でやりとりを行う。
    ・徐々に、様々な活動に誘っていく。
    遊びに誘う際は、警戒心を抱かせないようにスモールステップで誘う。
    (スタッフが行っているのを見せるだけ、見せながら少し距離を縮める、少し手に触れさせる…)
    ・児が活動に興味を持つ瞬間を逃さないようにする。
  • 結果:・苦手だった感覚遊び(スライムや小麦粉粘土など)も触れるようになった。
    ・バランスボールや回転いす、スクーターボードなどにも興味が出てきた。

【第3段階】(平成28年10月~)

  • 支援方法
    目的:人へ注意を向ける。
    方法:・好きな遊びを介したやりとり遊びを行う。
    ・『他者と一緒に遊ぶことが楽しい』と思えるよう、好きな遊びを用いた上で、
    発達段階に応じた関わり(→関わり方の具体例:次の以下参照)を行う。
  • 結果:・アイコンタクトが増え、表情がとても豊かになった。
    ・要求表現が増え、動作模倣が見られるようになった。
    ・音声模倣は不明瞭ながらも模倣しようとする姿が見られている。
    ・二者関係の拡がりと共に、物への興味も拡がった。

関わり方の具体例

(本児=児、スタッフ=ス)
児:周囲をふらふら歩いた後に回転いすに座る
ス:児にゆっくり近寄り、いすを左右に少しだけ揺らす
児:少しだけ表情が和らぐ
ス:いすの揺れを少し大きくする
→児の表情を見ながら揺れを大きくしていき最終的に回転させる
児:笑顔になる
ス:回転を止める
児:「あれ?」という表情をする
ス:「もう一回?」と身振りを交えて尋ね、もう一度回転させる
これを何度か繰り返す
児:もう一回してほしいときにスタッフへ手を伸ばすようになる
ス:「もう一回」と言って、身振りの模倣を示す
⇒これを繰り返していくうちにアイコンタクトが増え模倣も見られるようになった

最終評価

【言語コミュニケーション面】初期評価との比較(変化点を赤文字で記載)

理解面 ・単語理解は日常高頻度語に限る
⇒簡単な日常的言語指示の理解(+)(「手を洗うよ」など)
・指さし(-)
⇒指さし(±)
・大小(-)、色名(-)、二語文(-)
表現面 ・発語(-)、発声はわずか
⇒単音の音声模倣(+)、喃語様の発声(+)
・身振り(-)、指さし(-)
⇒動作模倣(+)、手差し(+)
・要求表現:手引きによる表現はあるが不確実
⇒要求時に/papa/、手差し(+)、要求表現明確に
・拒否は態度で示す(泣く、逃げる)
⇒首ふり、手差し、表情、発声にて表現(+)
コミュニケーション面 ・アイコンタクト(-)
⇒アイコンタクト(+)
・二者関係の確立(-)
⇒二者関係の確立(+)

結果のまとめ

  • JSI-miniの結果から感覚の大きな偏りと強い感覚過敏が示唆されたため、児に警戒心を抱かせないよう感覚特性を考慮した関わり(環境調整、段階をつけた支援方法、物の提供の工夫など)を行った。
    ⇒結果として、他者への意識が育まれ、二者関係の構築につながった。
  • 言語の発達促進として、コミュニケーション面に焦点を当て、発達段階に応じた関わりを行った。
    ⇒結果として、言語理解、表現の向上が見られた。

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音楽療法

概要

  • A君
  • 広汎性発達障がい 知的障がい(重度)

A君の様子

  • 緊張が強く、気持ちのコントロールが苦手
  • 決まったお友達がいると参加できる
  • 1人で窓の外を見て過ごすことが多い
  • 音などの刺激に対して叫びで反応する
  • 聴覚に過敏性がある

目的

  • 自分から外界へ発信することが少ない、刺激に対して叫びでの反応
    →意思の表出の増加
  • 過敏性があり、緊張が強いため活動に入ることが難しい
    →安心して参加できる

方法

  • 小集団音楽療法 3~5名
  • 全12回(うち2回は個別療法)
  • 時間:30~40分

療育内容①

  • 始まりのうた:呼名に対する返答
    挨拶と呼名が入った歌にて、名前への意識、アイコンタクトを促し、やりとりの中で声量、タイミングなどその場にあった行動を学んでいく。
  • イメージ遊び:生活動作の表現
    日々の生活をテーマに音や動きで提示し、動作模倣や再現を行う(例、歯磨き、料理)。言葉と動作のマッチングを行い、生活習慣や場にあった行動へ結び付けていく。

療育内容②

  • 楽器活動:名前、楽器名を入れた即興演奏に合わせた演奏
    楽器ごとに簡単なメロディを決め、そのメロディに合わせて楽器を奏でていく。はじめは、○○くんの太鼓がドン♪など、名前を入れて注意を促し、なれると楽器名、音楽のみと情報を限定していく。注意の持続・分散、推測力、音楽に合わせる自己調整、非言語的コミュニケーションを促していく。
  • 片付けのうた:サザエさんの替え歌
    活動が終わる準備。馴染みのある音楽を片付けの歌として繰り返し用いることで習慣化し、音楽が流れることで片付けの意識付けを行う。

経過

1回~6回目 一人で楽しむ(職員の介入を嫌がる)
自分のペースで活動に入る
7回目 声でのやり取り
8回目 ベル、ピアノなど同じ楽器でのやり取り
楽器活動のみ参加(集団の中で曲に合わせて演奏)
9回目 それぞれが違う楽器を用いてのやり取り活動参加

結果

  • いやだという発信が出て、やり取りを楽しむようになる。
  • 活動中同じ空間で過ごすことが出来るようになる。
  • 音楽での職員とのやり取りができ、周りへの気づきが生まれる。
  • 自分で鳴らすことを楽しむと共に聴くことを楽しむ。
  • はじまりのうたで叫ぶことなく返事が出来る。

考察

  • 本児と物と職員、本児と物としての職員、本児と職員のように関係が変化していった。
  • 周りの音を受容することが難しく、集団での活動に入れなかったが、楽器を鳴らす、声を出すことを職員を鏡のように受け取ることで周りに気づき、音・音楽への興味、関心から受容に至ったと考えられる。
  • 本児の好きな高音から低音への流れを音楽の中に取り入れることで音への気づきが促されたと考える。
  • はじまりから終わりの見通しがたち、安心して参加できる。

今後の展望

  • 意思表出の拡大
  • 共感性を高める
  • お友達とのやり取りを楽しむ

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臨床心理士

臨床心理士のお仕事

  • 臨床心理学に基づく知識や技術を用いて、
    “こころ”の問題にアプローチしていく「こころの専門家」です。
  • 具体的には、心理面接や心理検査を通してその人の特性をくみ取り、
    心理療法を取り入れたアプローチを行っていきます。

しんがくどうでは…

お子さんと活動や日々のコミュニケーションを通して特性や考え方をくみ取り、その子が得意なことを伸ばしたり、苦手なことを補う方法を一緒に考えたりしながら、その子らしく自信をもって生活できる手助けをすることを目的として関わっています。

発達検査による評価

  • 発達検査を用いて、1対1の設定された場面でその子の発達段階、能力や反応を評価することもあります。
  • 左図のような積み木や絵カードを使って、遊び方や対応の仕方、言葉の理解力など総合的に発達を評価し、その子との関わり方に活かしていきます。

 

遊び・活動の中での関わり

  • 日々の自由遊び時間や活動の中で、その子の発達段階、能力や反応を評価し、することもあります。
  • 例えば、物の操作(遊び方)・ルールの理解力、考え方、人とのかかわり方などを見て、次につなげていきます。
  • 左図では、巨大シャボン玉を作る活動の中で、お友達とのやりとりの仕方や、体の動き、集中力、その子なりの工夫点などを見ています。

 

心理的アプローチ

  • 検査や日々の活動での評価を基に、その子に合わせた関わりをしていきます。
  • 例えば、言葉で自分の思いや気持ちを伝えることが苦手なお子さんには、遊戯療法や描画療法を用いて、その子なりの表現から伝えたいことをくみ取っていきます。
  • また、人との関わり方に難しさを感じているお子さんには、SST(ソーシャルスキルトレーニング)を用いて、より良いコミュニケーションのためにどうすればいいかを一緒に考えていきます。

 

など、様々な理論や技法を用いながら、その子に合った支援を行います。

実践例① 発達検査

  • 対象:A君 6歳3ヶ月
  • 診断名:自閉症スペクトラム 精神発達遅滞
  • 実施検査:田中ビネーV

<検査時の様子>

  • 1対1の場面では着席して課題に応じる
  • 検査道具を出すと「あ」と言いながら指差して席を立つ
  • 型はめでは、指示の前に全て型にはめる。全問正答
  • 絵を見て物の名前を答える課題では、スムーズにこたえる
  • 指さしで応える課題では、検査者の質問に対しては応じず、自分のタイミングで物を指差し、検査道具を返す
  • 模倣課題では、「まねして言って」という教示では、何も言わず検査者を見るが、「〇〇って言って」と伝えると応じる

<評価結果>
CA6:3 MA2:6 IQ40

<見立て・所見>

  • 知的発達は2歳半ほどの能力で中度の遅れ状態得意な能力
  • 視覚情報を見て理解する
  • 大人に対し、指さしや発声で注意を引く課題点
  • 曖昧な内容や指示を理解することが苦手
  • 相手を待つことが苦手で自分のペースで行動しやすい

<支援の方法>

  • あいまいな表現(あれ、それ等こそあど言葉や「同じようにして」といった抽象表現)を避け、具体的な言葉を用いてに伝える
  • 口頭で伝えるだけではなく、視覚的な情報を一緒に提示する
  • 遊びの中で相手に注目できるタイミングを作る(例:おもちゃを最初から渡すのではなく、視線を向けて要求したときに渡すなど)
    ⇒日々の活動に活かしていく

実践例② ABA(応用行動分析)

「ABCフレームによる分析」
内容:お子さんの困った行動について「行動の前の状況」「行動」「行動の結果」に分けて分析し、
困った行動を望ましい行動に変える支援に役立てる。

Aくんの場合
【困った行動】制作活動(やりたいこと)ができないと癇癪を起こしてしまう。

「行動の前の状況」「行動」「行動の結果」それぞれの段階でのアプローチ

※適切な行動の習得には2つを併せて行うのが効果的


※この他にも、さまざまな分析の視点を活用して、活動を工夫していきます。

実践例③ 描画療法

「交互色彩分割法」
使う物:A4の画用紙・黒のサインペン・クレヨン
内 容:子どもと心理士が交互に線を引く。そして、交互に1マスずつ色を塗る。
目的①:絵を媒介とすることで言語に限定されないコミュニケーションをとる。
目的②:子どもと心理士の関係性構築と視覚化。

Aちゃん(7歳/女)の場合
※自閉症スペクトラム児。心理士と1対1の関わりが初めての場面にて。

  • 様子
    線を引く際は、心理士の線を全く気にせず、自由に引いていた。色を塗る際は、子どもの選んだマスに隣接するマスを心理士が塗り始めると、「いいね~きれい」と笑顔が見られた。子どもの方も、色合いを意識したり、隣接するマスを選んで塗ったりし始めた。完成すると拍手をしていた。
  • 考察
    二者間の関係ができていない状態において絵を媒介にすることで、緊張が緩和される様子が見られた。心理士が本児の描画に寄り添うような色とマスの選択をしたことで、本児からポジティブな反応があった。言語に限定されない関わり方として、有用であったと言える。

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